認知症とは
物忘れだけが認知症の症状ではありません。認知症の主要症状(中核症状)は記憶障害をはじめとした知的機能の障害で、失語、失行、失認および実行機能障害など複数の知的機能の障害が原因疾患や病気の進行に伴い認められます。
失語-呂律が悪くなったり、言葉が浮かばなくなる状態
失行-運動機能が損なわれていないにもかかわらず、動作が出来なくなる状態
失認-対象物が認識できない状態
実行機能障害-目的を持った一連の行為を成し遂げることが出来なくなる状態
その上に、原因や病気により周辺症状(BPSD)が出現することがあります。周辺症状には陰性症状として無気力、不安、うつ状態、睡眠障害などがあり、陽性症状には興奮等があります。また進行すると病識がなくなり多幸的になることも見受けられます。
認知症専門医を修得した理由
私が専門医として循環器専門外来を病院で行っていた時代、外来通院中の高齢女性が心臓の治療はうまくいっているにもかかわらず、今思えば、認知症(レビー小体型認知症)にて徐々に症状が進行し、より良い対処が出来なかった経験がきっかけです。その頃は認知症に関して、今のように医学的情報も少なく、診断も遅れ、対処する方法も限られていました。その頃の苦い経験を、今に活かしていきたいと思っております。
認知症かな?と気になったら受診を
認知症とは、正常に働いていた脳の機能が低下し、記憶や思考への影響が見られる疾患です。物事を記憶したり判断したりする能力や、時間や場所・人などを認識する能力が低下するため、実生活に支障が生じてきます。
今まで普通にやれていたことが急にできなくなった、通い慣れていたはずの道がわからなくなった、同じことを何度も聞いたりするようになった――こうした“もの忘れ”には、単なる加齢による場合と認知症の初期段階の場合とがありますので、一度、専門医療機関を受診なさるよう、お勧めいたします。
このような症状の方はご相談ください
- ものの名前が思い出せなくなった
- しまい忘れや置き忘れが多くなった
- 何をする意欲も無くなってきた
- 物事を判断したり、理解したりする力が衰えてきた
- 財布やクレジットカードなど、大切なものをよく失くすようになった など
ご家族のこんな症状にお気づきの方はご相談ください
- 時間や場所の感覚が不確かになってきた
- 何度も同じことを言ったり、聞いたりする
- 慣れている場所なのに、道に迷った
- 薬の管理ができなくなった
- 以前好きだったことや、趣味に対する興味が薄れた
- 鍋を焦がしたり、水道を閉め忘れたりが目立つようになった
- 料理のレパートリーが極端に減り、同じ料理ばかり作るようになった
- 人柄が変わったように感じられる
- 財布を盗まれたと言って騒ぐことがある
- 映画やドラマの内容を理解できなくなった など
認知症の種類
認知症は一つの病気ではなく、いくつもの種類があります。
主なものには、下記の4つが挙げられます。
- アルツハイマー型認知症
- 脳血管型認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
認知症の治療
認知症を完全に治す治療法は、まだ存在しません。しかし早期発見・早期治療は進行を遅らせたり、周辺症状(BPSD)を改善することにより生活の質を高めたりと有益なことがあります。
認知症の治療法には、薬物療法と非薬物療法があります。
薬物療法
認知症の薬物療法には、認知機能を増強して、中核症状(記憶障害や見当識障害(自分が置かれている状況がわからなくなる)など、脳の神経細胞が壊れることによって直接起こってくる症状)を少しでも改善し、病気の進行を遅らせる治療と、周辺症状(不安、焦り、怒り、興奮、妄想など)を抑える治療があります。薬の効果と副作用を定期的にチェックしながら、個々の患者様の症状に合わせて使用していきます。